確定申告でつまづきやすい損益通算についてカンタン解説

損益通算とはどういうものか

所得税では所得(儲け)の種類を、儲け方によって10種類に分け、それらをすべて合計して所得税の計算をします。
たとえばあなたにA,B、Cという三種類の所得があったとしましょう。 

キャプチャ1
当然、A+B+Cの合計に所得税がかかってきます。

ではこのうちC所得だけが損失(赤字)だった場合はどうでしょうか?

キャプチャ2

C所得は赤字なので当然税金はかかりません。問題はその赤字をAとBから差し引いてよいかどうか?ということです。

①A+B に税金がかかるか(Cの赤字は切り捨て)?
②A+BーC に税金がかかるか(Cの赤字を差し引ける)?

当然②の方が税金は少なくなります。
ただしCが引けるかどうかは厳格にルールが決まっていて、引いてよい場合もあれば引いてはいけない場合もあります。
それが「損益通算」と呼ばれるものです。 

引ける所得は何か?

所得は10種類あると書きましたが、次の通りです。

①利子
②配当
③不動産
④事業
⑤給与
⑥退職
⑦山林
⑧譲渡
⑨一時
⑩雑

頭文字をとって「りはいふじきゅうたいさんじょういつざつ」です。

このうち、損失が出た場合に引けるのは

③不動産
④事業
⑦山林
⑧譲渡

の四種類です。
こちらも頭文字をとって「ふじさんじょう」です。

その他の所得はそもそも損失が発生しなかったり、他の所得から引くことがふさわしくないなどの理由から、この四種類に限定されています。

どの所得から引けるか?

引ける四所得がわかったら次はどの所得から引くか?です。上のグラフで言えばA,Bに当たるところです。

引かれる方の所得はとくに制限がなく、すべての所得から引くことができます。
ただし、引かれる順序が明確に決まっていますので、その順序通りに引かねばなりません。

以下、その手順を説明します。

①引かれる所得を4グループに分ける 

結論を言うと、引かれる順序は

A 経常所得
B 譲渡・一時所得
C 山林所得
D 退職所得

となっています。 

ここでAの経常所得って何だ?ということですが、経常という名の通り、毎月、毎年など一定の期間ごとに発生するような所得のことを言い、

①利子
②配当
③不動産
④事業
⑤給与
⑩雑

がこれにあたります。

これに対し、譲渡・一時、山林、退職所得の四種類については経常的ではないという扱いとなります。

②損失はまず自分のグループから差し引く

A 経常所得
(利子・配当・不動産事業・給与・雑)
B 譲渡・一時
C 山林
D 退職

赤文字で示したものが「引ける」方の所得です。

・Aの経常所得内に損失がある場合
不動産所得事業所得の損失があれば、Aグループ内でまず通算します。 

 ・譲渡所得の損失がある場合
一時所得から差し引きます(長期譲渡と一時はその後1/2)。

③上から順に引いていく

それぞれのグループで引き切れなかったり、山林所得の損失があった場合はどうでしょうか。

・Aの経常所得が損失の場合
 ↓こういう状態です。

A 経常 △
B 譲渡・一時 +
C 山林 +
D 退職 +

Aの損失はまずBから引き、それでも引き切れなかったら(下の状態)

AB △
C 山林 +
D 退職 +

さらにC,Dから順次引いていきます。

ABC △
D 退職 +

それでも引き切れなかったら・・・

ABCD △

その損失は一定の要件のもと、翌年に繰り越すことができます。

・B 譲渡・一時が損失の場合
↓こういう状態です

A 経常 +
B 譲渡・一時 △
C 山林 +
D 退職 +

いったん上に行ってAの経常から引き、それでも引き切れなかったら(下の状態です)

AB △
C 山林 +
D 退職 +

先ほどと同様にC、Dの順序で引いていきます。

・山林が損失の場合
↓こういう状態です 

A 経常 +
B 譲渡・一時 +
C 山林 △
D 退職 +

これも同様に、上からA、B、Dの順で引いていきます。

まずは自分のグループで通算し、その後上から順に引いていくというルールです。
上から順に「けいじょうじょういちさんりんたいしょく」です。

措置法上の分離課税はこの規定外

措置法上の分離課税、

土地建物の譲渡、上場配当、上場株、一般株、先物

についてはこの損益通算の仲間には入りません。

分離課税についてはこちらを参照して下さい。
分離課税の正体をざっくり解説 | 税理士向井栄一Official Site 

まとめ

損益通算について大枠を説明しました。
図にすると下の通りです。 

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