分離課税の正体をざっくり解説

「分離課税」

一見するとものすごく難しい言葉に見えますが、読んで字のごとく
「分けて」「課税する」
という意味です。
理屈がわかると抵抗感もなくなると思いますのでざっくり解説します。 

所得税のキモは超過累進課税

所得税は、所得が多ければ多いほど税率が上がっていきます。
所得税の税率表です。 

スクリーンショット 2017 03 05 16 43 43
所得が上がるにつれ税率が上がっています。

所得税では所得を10種類に分類しますが、それぞれの所得が積み上がっていくとどんどん税率も上がっていく構造です。
所得を積み上げてまとめて課税することから「総合課税」と呼ばれます。

分離課税とは、この総合課税と分けて計算することを意味しています。
つまり、
他の所得と一緒にして積み上げなくてもいいよ
その所得だけで税率をかけていいよ
ということです。 

分離課税は大きく分けて二つある 

分離課税には

所得税法の分離課税
租税特別措置法(以下措置法)の分離課税

の二種類があります。
措置法とは、その時々の経済情勢などに合わせ、期限付きで施行される法律です。本法(所得税など)を補足するようなものとイメージして下さい。

所得税法で定められている分離課税は

山林所得
退職所得

の二つです。

これらの所得の共通点は
・お金が入るまでに長期間を要しがち
・金額も大きくなりがち
という点です。

こういった所得を、ほかの所得と一緒にして、積み上げた高い税率で課税してしまうのは不公平だ!という観点から、総合課税とは分けて単独で税率をかけてもいいよ、という趣旨になっています。 

一方、措置法上の分離課税には

土地建物
上場配当
上場株
一般株
 先物

といった種類があります。 

これらはおもに政策目的で定められています。土地や株の取引を、税制によって誘導したり制御しようとしているわけです。
また、先ほどの山林所得、退職所得には上の表の超過累進税率をかけるのに対し、これらの所得には税率が別途定められています。
主な税率は次の通り(復興所得税は考慮していません)。

  所得税(%) 住民税(%)
土地建物・長期 15 5
土地建物・短期  30 9
 上場配当 15 5
 上場株 15 5
一般株 15 5
先物 15

税率を固定することで、税額を予測しやすくするという側面があります。
たとえば土地を売った場合、大抵は金額が大きくなりがちです。そういった場合、総合課税だと他の所得が決まるまで税率もわかりませんから、どれだけの税金を払うことになるか予測がしづらくなります。
あらかじめ税率が決まっていれば、確定申告の時期を待たずしてすぐに税額が計算できるわけです。 

まとめると下図のようになります。

 スクリーンショット 2018 01 12 17 04 58

源泉分離課税

分離課税にはもう一つの切り口があり、手続き別に分けると

源泉分離課税
申告分離課税

の二つに分けられます。

源泉分離課税とは、支払う側が税金を天引きして代わりに税務署に納付する方式です。
申告分離課税とは確定申告書の提出が必要となる方式です。
源泉分離で完結するもの、源泉されながら申告分離ができるものなど、所得によって取り扱いがまちまちとなっていますがここでは説明を省きます。

まとめ

どこか抵抗感のある「分離課税」についてざっくり説明しました。
趣旨を知り、分解してみると抵抗感も薄れるのではないかと思います。