在庫のカラクリを図解・決算では棚卸しが大事!

決算日には在庫を数える必要があります。

在庫の数字によって利益が増えたり減ったりします。

なぜ在庫を数える必要があり、なぜ利益が増減するのか。

そのカラクリを解説します。

初年度の処理

まずは初年度が終わったと仮定してください。

1年間で仕入れた金額をハコで表しました。

商品は何でもいいので身近なものを想像してみてください。

(事業年度は1年と仮定します)

1年間で仕入れたもののうち、決算日(1年の最後の日)に残っていたものが青いハコの部分です。
ということは、青いハコ以外の部分は売れた事になります。

商品は仕入れただけでは費用にはならず、売れて初めて費用化されます。

売れた部分のことを「売上原価」と呼びます。

図では「売原」と略しました。

これを簿記の仕訳で表すとこのようになります。

日商簿記では、上のように仕入を減らし、繰越商品という資産が増えることとなります。

実務上は、財務諸表に表示する科目をダイレクトに使いますので、下のような仕訳をすることが一般的です。「期末商品」という科目は経費のマイナスの意味合いを持ちます。

売上原価に利益をのせたものが、その年の売上です。
当然、売上原価と売上は対応関係にあります。
売上から売上原価を引いたものが粗利です。

粗利と書いて「あらり」と読みます(「荒利」は当て字です)。

損益計算書では「売上総利益」に表示されます。

ここまでが初年度の処理です。

 

2年目以降の処理

2年目には、初年度に売れ残った在庫が繰り越されてきます。
この処理を仕訳で表すとこうなります。

繰り越されてきた商品は、再度「仕入」に足し戻されるわけです。この仕訳で「繰越商品」はいったんゼロになります。

実務上は「期首商品」という科目を使います。

繰り越された商品だけで足りなければ、当然2年目も商品を仕入れます。
2年目の決算を迎え、また在庫を計上します。
古い商品から売れたとすれば、図のような売上原価がイメージできると思います。
初年度と同様に、売上と売上原価が対応します。
先ほどの期首(年の始め)の仕訳に、期末の在庫の仕訳を加えます。
(おのおの2行目)

これは初年度と同じです。

初年度同様、売上ー売原=粗利です。

 

これまで見てきたように、在庫を数えることによって「売上原価」を求め、その結果として「粗利」が計算されます。

ここでの最終目的は粗利を計算することです。

そのためには売上原価を特定する必要があります。

そして、売上原価を直接計算するより、在庫を数えて仕入から差し引いた方が簡単に計算できるわけです。

在庫を数える意味がわかっていただけたでしょうか。

 

在庫がどのように利益に影響するのか

では、在庫の数字が増減することで利益(粗利)にどのような影響が出るのかを見ていきます。

在庫の数え間違いが致命的なミスになりかねないということを説明します。

 

先ほどの図を用いて、在庫が増えたり減ったりした場合の変化をそれぞれ見ていきましょう。
まず、在庫が増えた場合です。

たとえば計算間違いか何かで、実際の在庫よりもたくさんの在庫を計上してしまった場合を想定してください。

在庫のハコが大きくなった結果、売原のハコが小さくなりました。

結果、粗利のハコの点線部分がずれてしまいました。

粗利のハコを訂正すると、在庫が増えた分粗利が増えたことがわかると思います。

このように、過大な在庫を計上すると利益も過大となってしまいます。

逆に在庫が少なかった場合はどうでしょうか。
在庫が減ったことでハコにズレが生じました。
このズレを訂正すると、在庫が減ったことに連動して粗利も減ったことがわかると思います。

在庫が過小だと利益も過小となってしまいます。

 

 

このように、在庫の数字が動くことで利益そのものが増えたり減ったりするのです。

それゆえに、在庫は税務調査でもっとも指摘されやすい箇所のひとつでもあります。

在庫を数えること(棚卸し)の重要性がわかっていただけたでしょうか。

在庫は過不足なく、正しい金額で計上する必要があります。