漁業の確定申告は平均課税を使わないと大損します!

 

illustration; iPad Pro,Apple Pencil,procreateapp

去年(2016年)は漁業(のりの採取)は好調だったようで、前年に比べて一気に所得が増えている場合があるようです。
所得が増えると当然所得税も増えますが、「平均課税」の規定を適用すると大幅に税負担を減らすことが出来ます。 

この規定を知らないと高い税金を払ってしまうことになります。
実際にとあるお客様で、この規定を適用せずに100万円あまりの税額を計算していたところ、平均課税の適用により半分近くに税額が下がりました。

知っているか知らないかが大幅に税負担を変えてしまう規定です。 

平均課税で税額が大幅に減ります

たとえば漁業のような仕事は、漁獲高によって所得が大きくアップダウンしてしまいます。
漁獲高は自然条件によって左右されてしまうため、年ごとに見ると所得が安定していません。

所得税は累進超過税率なので、所得が増えれば税率も上がります。

↓所得税の税率

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例えば前年の所得が300万円だったとすれば税率は10%。
その翌年は急激に漁獲高が増え、所得が一気に1000万円にあがったとすれば、税率も33%に上がってしまいます。 

しかし、豊漁の翌年にまた不漁となれば、豊漁の年の所得で食いつないでいかねばなりません。
数年間の所得を平均すると毎年低い税率になるはずなのに、1年間で数年分の所得を稼いでしまうと一気に税率が跳ね上がってしまうのです。

 このように漁業など、自然条件により年々の所得のアップダウンが激しい所得の場合、豊漁だからといって一気に税金を取られてしまうと税負担に大きな差が生じてしまいます。

これを調整するための計算方法が平均課税といわれるものです。

平均課税の仕組み 

平均課税とは簡単に言うと、
「たくさん稼いだ年も、高い税率ではなく低い税率 でいいですよ」
という制度です。

何をもって「たくさん稼いだ」か、というのは、
・前年と前々年の平均との比較と
・その所得がその年のすべての所得の20%以上かどうか
で判定します。

3年間の所得が次のようなグラフで推移していたとします。

3年目である”本年”は、”前年”に比べて一気に所得が増えています。
ここで、前年と前々年の平均を取ります。

すると下のようなグラフになりました。 

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・本年の所得が過去2年間の平均を上回った場合、「たくさん稼いだ」と判定され、
・対象となる所得(例えば漁業の所得)が他の所得も含めた全体の20%以上であれば、
平均課税を適用することができます。

その、「たくさん稼いだ」部分、すなわち下のグラフの赤い部分。
これが「平均課税対象金額」となります。 

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この出っ張った赤い部分については、

5分割して税額を計算する

ことができます。
どういうことかというと、
1年分まるまるだと超過累進税率で税率が高くなる・・・
しかし、5等分して1つずつに税率を適用すれば低い税率になる、

1年で得た所得を、5年で得たものと仮定して計算していいよ、ということです。 

もう一度税率表に戻ると

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例えば所得1000万円なら税率33%、
5分割して200万円なら税率10%です。
そしていったん5分割で計算しものをすべて足したものがその年の税額となります。 

厳密にはもう少し複雑な計算をしますが、簡単に考え方をいうと以上のようなことになります(一般の方向けに書いておりますのでプロの方のツッコミはご勘弁を(^^;))。 

平均課税の対象になる所得

この規定はどんな所得でも、何でもかんでも適用できるものではありません。
以下のような「変動所得」と「臨時所得」といった所得に限られています。

変動所得

漁獲やのりの採取による所得
はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得
印税や原稿料、作曲料などによる所得

臨時所得

一定の権利金や頭金
一定の契約金
一定の補償金
 臨時所得は前2年分の平均との比較はしません。

変動所得の養殖の種類(はまち、まだい・・・)などは限定列挙で、条文にはっきり書かれています。税理士試験の受験ではもちろん一字一句暗記しました。

適用を受けるには

平均課税の適用を受けるために事前の届出や申請は必要ありません。

確定申告書に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」という計算書を添付して提出します。

まとめ

変動所得や臨時所得は税負担が軽減されています。
大幅に所得が上がった方は平均課税が適用できるかどうか検討してみましょう。